2020年、21年は新型コロナウイルス感染症の拡大や東京五輪・パラリンピックの開催など、東京の不動産価格に大きな影響を与えそうな事象がありました。ちょうど、7月1日時点の基準地価が発表されたところですので、その内容を見てみましょう。
東京都の今年の基準地価は住宅地と工業地が9年連続でプラスを維持した一方、商業地が9年ぶりのマイナスとなりました。全用途の平均はプラスこそ維持しましたが、上昇率は縮小しました。
多摩地区の住宅地が上昇
まず、住宅地の上昇率は0・2%で、昨年と同率でした。ここで注目すべきは多摩地区が0・8%の下落から横ばいに改善した一方、区部は上昇率が1・4%から0・5%に鈍ったことです。これはコロナ禍でよく言われる「テレワークになって出社回数が減る」→「会社までの距離を気にしなくていい」→「郊外に割安で広めの住宅を買う」という流れが表面化しているように見えますね。
それでは工業地はどうでしょうか。これも区部では上昇率が2・1%から1・7%に鈍った一方、多摩地区は0・7%下落から2・1%の上昇に転じました。住宅地と似た傾向が出ているようです。工業地全体の上昇率は1・9%で、昨年の1・0%から上昇幅が拡大しました。
繁華街の下落が大きく
最後に商業地です。都内全体では1・3%の上昇から、0・3%の下落に転換しました。特に大きな変化があったのは区部です。変動率は昨年のプラス1・8%に対し、今年はマイナス0・3%となりました。都の公表資料によると、都心の区を中心に、下落した調査地点が増加し、繁華街やオフィスの集積する地域に下落の大きな地点が見られたそうです。一方、多摩地区は改善が進み、変動率はマイナス0・4%から横ばいになりました。中でも三鷹市は1・6%上昇、国分寺市の0・8%上昇などが目立ちました。
都内の地価は昨年の基準地価で、全体に上昇率が鈍ったり下落に転じたりしました。しかし、コロナ禍も2年目に入り、区部は下落基調、多摩地区は改善基調という状況がはっきりしたようですね。